REALM OF DREAM前作のあらすじ

「REALM OF DREAM」(レルム・オブ・ドリーム)
作:別役慎司

2011年執筆 2017年改訂版

宗教団体「神宝会(しんぽうかい)」の教祖、黒飛龍宝は、絶対幸福の『秘儀』を探求していたが、誰にも伝えられないまま、あるとき意識が戻らない植物人間状態になってしまった。そこで、一人息子で後継者候補の黒飛空と教団No.3の権藤が、夢や潜在意識の研究をしている土屋甚二郎教授のもとを訪れる。眠る龍宝の意識にアクセスし、秘儀を取り出すことができれば成功報酬一千万円という条件で依頼する。甚二郎の授業では、夢の世界から深いレベルへと旅する方法を教えているのだ。借金を抱える甚二郎は、喜びの反面浮かない顔をするが、彼の優秀な生徒である堂ノ上太陽・海城真琴・観月花菜を連れて、山奥の豪華な教団施設へと向かうことになる。

龍宝氏の意識を連れて帰るか、秘儀を知ることができれば任務は成功となる。身体への執着を緩める薬と、脳への信号によって、意識の旅の準備を整え、甚二郎や教団幹部らが見守る中、太陽・真琴・花菜の三人は眠りにつく。そして意識のレベル1で再会する。龍宝の意識を探すが、真琴ははぐれてしまい、空の意識と遭遇し、空の苦悩を垣間見る。太陽と花菜は龍宝の自我と出会うが、意識は更に下に潜っているという。そこにも空の意識が現れ、教団や秘儀について父を問い詰める。秘儀はまもなく完了すると告げる龍宝。一回目はうまくいかず三人とも起きてしまうことに。

龍宝の意識に接触するためには一人息子の空がキーとなると考え、二回目は、空も加わることに。しかし、彼は、離婚した母の洋子に悩みを吐露していたように、父との葛藤から夢境に迷い込んでしまう。一方、太陽は、権藤の自我にアクセスし、権藤が教団を乗っ取るつもりでいることを知る。太陽はそのことを真琴に伝える。真琴は危険を知らせるために一旦起きるが、空や甚二郎や幹部たちの姿がない。不審に思って教団内を探す。太陽と花菜は、レベル2、レベル3へと深く潜っていく。レベル2では生きた魂との交流。レベル3は過去生の魂と出会うといわれる。

その頃、現実では権藤が、空に薬を盛り、自殺に見せかけて殺そうとしていた。夢境に迷い込んだのは薬のせいだった。気づいて止めに入った真琴もナイフで刺されてしまう。夢境に囚われていた空は、母親洋子の遠方からのアクセスによって迷いを断ち切り、救われようとしていたが、現実世界の影響によって窒息死しそうになる。
花菜はレベル3で自分の過去生に驚いて目覚めてしまい、周りの様子のおかしさに気づく。見ると、龍宝氏の心拍計も危険を警告している。一人になった太陽のところに、甚二郎の意識が加勢に来る。彼は気絶させられたことで、夢の世界を進んできた。甚二郎と太陽は妖精や天使たちのいるレベル4を目指すことに。みんなを探す花菜は、権藤によって殺されようとしている空を発見するが、花菜もまたナイフで刺されてしまう。首に鎖が巻き付いて苦しむ空と洋子も、レベル4で甚二郎と太陽に出会う。
洋子は天使と妖精に祈り、権藤の殺人行為が打ち消される。真琴と花菜の傷も消え、空の首の鎖もバラバラに。龍宝の姿が権藤の前に現れ、一喝すると、権藤はひるむが、姿が見えなくなると拳銃で空を殺そうとするが、その企みも失敗に終わる。かつての同志である甚二郎と洋子にも見送られ、龍宝の意識は神の領域であるレベル5へと向かう。死と引き替えに秘儀は完了された。
かくして任務は終わり、土屋たちは帰路につく。空は、教団を継承するアナウンスをするが、すみやかに解体することを伝え、真実を探求する自らの道を歩み出す。